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果樹の有機農業技術開発を目指した山梨県内果樹栽培圃場における調査研究

代表者:矢野 美紀 准教授(生命環境学域)

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■プロジェクトの目的

果樹の有機栽培は極めて難しいと考えられており、研究事例はほとんどない。一方近年、植物と相利共生の関係にある土壌微生物の機能について盛んに研究が行われており、様々な共生微生物が様々な機能によって植物を支えているだけでなく、それらの共生微生物の機能が、また別の共生微生物の機能によって支えられているなど、植物、糸状菌、細菌の間に見られる相利共生の関係が、これまで考えられているよりも普遍的に存在し、生物が互いに機能を補完しながら互いの成長や繁殖を支えていることを示唆する研究成果が次々と報告されている。

現在一般に行われている慣行栽培は、上述のような、作物を取り巻く生物の多様な機能についてまだほとんど知識がない時代に確立された。このため、その中心となる技術は、それらの生物の機能を活かすよりもむしろ抑制するものとなっている。今後さらに明らかにされるであろう様々な生物の機能を活かすためには、従来の栽培技術とは根本的に異なる新しい原理原則に基づいた技術の開発が必要であり、それによって生物の機能が十分活かされるとき、化学合成農薬や化学合成肥料の必要性が小さくなると考えられる。土壌微生物の機能に関する知見の乏しかった時代に浸透した果樹の有機栽培やその研究に対する否定的なイメージに縛られることなく、生物の多様な機能を最大限に活かすための新しい原理原則とそれに基づいた技術を見出すことが必要である。

一方、果樹栽培が盛んな山梨県では、一部の研究熱心な果樹農家が化学農薬や化学肥料の使用をできる限り抑えるための試行錯誤を行っている。おそらくこうした農家は、その経験から、圃場で見られる現象についての原理や法則を漠然と捉え、それを篤農家の“勘”として栽培に活かしているものと考えられる。しかし、その勘を一農家だけでなく、果樹産業全体に活かすためには、篤農家の勘として一農家の中に蓄積されている原理や法則を、言葉で明確にし、また真偽を検証する必要がある。

そこで、本研究では、有機栽培から慣行栽培まで様々な農法を行っている複数の農家において、栽培技術や果樹生産の実態についての聞き取り調査を行うとともに、圃場の土壌微生物調査、果実の収量調査や品質評価を行う。また、上記の農家以外にもできるだけ多くの果樹農家を対象に、上記と同様の聞き取り調査あるいはアンケート調査を実施し、栽培技術と果樹生長等との関係を考察する。

平成27年度成果報告会ポスター